大人のマナー講座 #18 「正しい敬語、遣えていますか?」 ④逆転敬語編
「どうぞ、いただかれてください」
先日行った飲食店で、食事を運んできた店員さんからこう言われました。どこが間違いか、お分かりになりますか?
「いただく」は謙譲語です。謙譲語とは、尊敬語のように相手を高めるのではなく、自分がへりくだることで相手を立て、敬意を表す言葉です。
冒頭のシーンでは、店員さんは私に「どうぞ食べてください」と言いたかったわけですから、この場合は「どうぞ、お召し上がりください」が正しい敬語表現です。このように、ウチ(自分側)とソト(相手側)で高める立場が逆転している表現を、最近よく耳にします。今月は、意外と遣ってしまいがちな逆転敬語についてご紹介します。
【電話で身内あてに伝言を預かった】
×「(夫、妻など)にお伝えします」
○「(夫、妻など)に申し伝えます」
⇒「伝える」のは自分の動作ですので、「お伝えする」と自分を高める表現は誤りです。
【父親が亡くなった】
×「父が逝去いたしました」
○「父が亡くなりました」
⇒「逝去」は他人の死を敬って言う表現ですので、身内に遣うのは誤りです。
【今後の予定などを確認する】
×「そちらはどういたしますか?」
○「そちらはどうなさいますか?」
⇒「いたす」は「する」の謙譲語ですので、相手の動作に対して遣うのは誤りです。
【一緒に目的地へ行くことを促す】
×「一緒に参りませんか?」
○「一緒にいらっしゃいませんか?」
⇒「参る」は「行く」の謙譲語ですので、相手の動作に対して遣うのは誤りです。
【受付で聞いて欲しい旨を伝える】
×「受付で伺ってください」
○「受付でお尋ねください」
⇒「伺う」は「聞く」の謙譲語ですので、相手の動作に対して遣うのは誤りです。
【試着室に案内する】
×「こちらの試着室をご利用できます」
○「こちらの試着室をご利用いただけます」
⇒「ご(お)~できる」は、謙譲語「ご(お)~する」の可能を表す言い方なので、尊敬語として使うのは、誤りです。
いかがでしたか?メールや手紙など文字化すると誤用に気づくことができても、会話だと咄嗟に謙譲語や尊敬語を判断して話さないといけません。これは意外と難しいので、まずは他の方が話しているときにアンテナを張って聞き、「あ、今の表現は間違っているな」というように「気づく」トレーニングから始めてみてはいかがでしょうか。