大人のマナー講座 #27 「プロトコールってなに?」

昨年は広島でG7が開催され、各国の首脳が来日されていました。またその少し前は、イギリスでチャールズ国王の戴冠式があり、世界中の王族・皇族が参列されていました。文化や風習が異なる国々の人々が一堂に会すとき、どのように秩序が保たれていると思いますか?それは、「プロトコール(国際儀礼)」という国交における儀礼上の公式ルールに基づいて行われています。今月は、マナーとプロトコールの違いについてご紹介します。

・プロトコール=国交における儀礼上の公式ルール(国際儀礼)

・マナー=一般社会におけるコミュニケーションのルール(礼儀作法)

これらは「似て非なるもの」なのです。

礼儀作法の根底には「自然界にあるすべての生命は尊い」という思想がありますが、砂漠や寒冷地など生きていくのに厳しい環境の土地では、自然は「克服する対象」でした。その中で様々な宗教が生まれ、その教義や地域の慣習に則って国交が行われるようになりましたが、航海術が発達し、多くの国や地域の人々の交流が活発になるとトラブルが頻発するようになりました。そこで19世紀初頭にイギリスとフランスの外交関係者が中心となり、現在のプロトコールがつくられました。

【プロトコール5原則】

1.地域慣習と異文化・異宗教への理解

  国同士の交流を円滑に行うためには、お互いの地域の慣習や文化を尊重することが

第一。一方で自国の精神や文化も正しく理解する必要がある。

2.序列に配慮

  出席者に対する敬意表現として、並び順、入場順、席次、挨拶の順番まですべての場で

序列が適用される。原則に従いつつ、TPOにより柔軟な対応を行う。

3.右上位

  レストランや乗り物での席、エスコート、国旗の掲揚に至るまで、右側が上位となる。

  テーブル席では、主催者の右隣に座る人が最上位の主賓者。

4.答礼・相互主義

  交流は必ず相互であること。接待を受けたなら、同様に接待の場を設けて返礼する。

  国際間の慶事や弔事でも、同程度の答礼を行うことが儀礼である。

5.レディファースト

  建物の出入り、エレベーターの乗り降り、道を歩くとき(男性が車道側)など、宗教的

  な制約がある場合を除き、欧米諸国では日常生活に浸透している。

プロトコールとはギリシャ語で「膠(にかわ)」を意味しており、膠とは「のり」のようなものです。「違うもの同士でも、皆が仲良く」という当時の王族たちの想いが伝わってきます。各国のマナーや信仰に配慮し、かつ合理的につくられたプロトコールに則ることで、世界中で同じ格式が保たれるのです。

いかがでしたか?以前に「マナーとは人を思いやる心です」と書きましたが、プロトコールは「人の心と生命の安全」を重んじています。これからテレビで首脳会議や王族・皇族のイベントの映像を目にした際は、ぜひプロトコールを意識して見てみてください。