大人のマナー講座 #8 「正しい敬語、遣えていますか?」 ①「~させていただく」編
最近、ドラマやCMを見ていて「?」と思う言葉遣いをされていることがよくあります。人は耳からの情報を記憶するのに長けた生き物ですので、日常的に間違った言葉遣いをテレビなどから繰り返し聞くことで、それを「正しい表現だ」と認知し、自然と自分もその表現を口にしてしまいがちです。正しい敬語表現を認知いただくため、まずは「『~させていただく』の正しい遣い方」について今月はご紹介いたします。
「~させていただく」
私が打合せや商談中に聞く、間違った敬語表現No.1が、「~させていただく」です。
例えば、
【初対面の方の自己紹介で】「○○会社の社長を務めさせていただいております、田中です」
【商品を購入する際に】「こちらの金額から30%お値引きさせていただきます」
などと仰る方が非常に多いです。
また、芸能人の方が結婚報告をする際などにも、
「○○さんと結婚させていただきます」
という表現が、定型文のように使われているな、と感じます。
上記の表現はいずれも「誤り」です。「~させていただく」という表現は、「相手の許可を得て初めて自分が行動に移すことが出来る場合」に遣います。一番目の例ですと、私が田中さんに「社長になって良いですよ」と許可したわけではありませんし、二番目の例では私が購入する側なのに「値引きして良いよ」と許可したわけではありません。結婚報告に至っては、世間の方々のお許しを得て結婚に至ったわけではありませんよね。
「○○会社の社長を務めております、田中です」
「こちらの金額から30%お値引きいたします」
「○○さんと結婚いたします」
という表現で良いのです。自分が主語の場合、「~する」という言葉は「~いたす」という謙譲表現を用いますが、この「~いたす(いたします)」が忘れられているようです。
正しい「~させていただく」の例文としては、
「先日のセミナーに参加させていただいた○○です」
「あなたのお家の近くに行く用事があるから、少し寄らせていただけると嬉しいわ」
などです。セミナーや何かの集まりに参加する場合、主催者に「出席」の許可を得ないと参加出来ませんし、友人のお家へお邪魔する際もその方の「来て良いですよ」という許可がないと伺えません。
また、メールなどの文面の場合、「~させて頂きます」と漢字表記なさる方もいらっしゃいますが、こちらも誤りです。「頂く」と漢字表記する場合は、「物を頂戴する」場合のみです。正しい意味で「~させていただく」という表現を遣う際でも、ひらがな表記なさるようご留意ください。
いかがでしたか?日常的に耳にする「~させていただく」という表現ゆえに、研修などでご紹介すると「初めて知った」「正しい敬語だと思っていた」と仰る方が、年代問わず非常に多いです。ぜひこの機会にご自身の敬語表現が正しいかふり返ってみてはいかがでしょうか。